犬の去勢・避妊手術の必要性について

犬に去勢や避妊手術を受けさせる理由には、大きく分けて3つあります。
1つ目は、将来かかる可能性のある病気を予防するため。主に、生殖器や性ホルモンが関係する病気を、去勢や避妊手術をすることで防ぐことができます。メスであれば、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍。オスであれば、精巣腫瘍などです。

2つ目は、犬のストレスを減らすためです。
オスであれば、去勢を行わないでいるほうが性的な欲求が高まるので、発情期のメスのにおいを嗅いだりして興奮しても、欲求を満たせない精神的ストレスが高まります。
メスでは、一般的には年に2回訪れて1カ月近く続く発情期に、陰部の腫れなどの違和感によってストレスを感じるケースもめずらしくなく、避妊をすれば発情期が訪れなくなるのでストレスを軽減できます。

3つ目は、繁殖をコントロールするため。多頭飼育の場合は、子犬を望まないのであれば、去勢や避妊は必要になるでしょう。
ドッグランなどで、発情期のメスと未去勢のオスが気づかぬうちに交配をしてしまうケースも少なくありません。人が飼育できずに不幸な運命を負わなければならない命を減らし、殺処分ゼロを実現するためにも、去勢と避妊は重要と言えます。

犬の去勢・避妊手術はどんな方法で行われる?

愛犬に去勢や避妊手術を受けさせようと思ったら、まずは動物病院で予約を取る必要があります。
手術の予定が先々まで埋まっている動物病院もあるので、子犬のうちに時期などを相談して予約しておけば安心です。

手術はオスもメスも全身麻酔をかけて行うため、麻酔によるリスクがないかどうかや、手術ができないような疾患がないかどうか、事前に術前検査を行うことになるでしょう。
手術可能だと判断されれば、動物病院の方針により、オスでは日帰りから数泊まで、メスでは1泊から数泊まで入院をして手術を行うことになります。

オスの去勢手術の方法

外科手術により、精巣が入っている睾丸を摘出します。
オスの睾丸は開腹が不要なため、左右の精巣を摘出するのに要する時間は、動物病院にもよりますが15~30分間ほど。
術後は、1週間前後で抜糸をします。溶けて体に吸収される糸を使用した場合は、抜糸は不要です。

メスの避妊手術の方法

メスの避妊手術には、卵巣だけ、あるいは卵巣と子宮の両方を取る方法があります。
いずれにしても開腹手術になるため、オスの去勢手術より時間はかかり、動物病院にもよりますが所要は1時間前後となります。
卵巣と子宮の両方を摘出するほうが侵襲は高くなるので、アメリカなどでは卵巣のみを取る方法が多いと言われます。卵巣がなくなると女性ホルモンが分泌されなくなり、子宮が退縮するので、子宮にかかわる病気の発生率が減ると考えられています。
オス同様、術後1週間ほどで抜糸となります。

犬の去勢・避妊手術の費用はどれくらいかかる?

犬の体重や入院する日数が異なると、手術費用に関しては差が生じてきます。
多数を占める1泊2日の入院で、小型犬を想定すると、平均的にはオスが2~3万円、メスが3~5万円です。詳細に術前検査をしたり、入院日数が長くなったりすると、小型犬でも10万円以上かかる動物病院もあります。

ちなみに、去勢・避妊手術は補償対象外となっているペット保険がほとんどですが、自治体によっては去勢・避妊手術にかかる費用に補助金を出しているケースもあります。

犬の去勢・避妊手術はいつ受けるのがベスト?

メスでは、初回の発情が訪れる前に避妊手術を受けた場合の乳腺腫瘍の発生率は0.05%と言われます。その確率が初回から2回目の間では8%、2回目以降だと26%になることが知られています。平均的には、犬の初回の発情期は生後7カ月頃。
それを考えると、メスの乳腺腫瘍を予防するには、早期の避妊が理想的です。ただし、生後120日以内は麻酔リスクが高まることもあり、あまりに早期の避妊はおすすめできません。

また、メスの子宮蓄膿症は珍しい病気ではなく、発見や治療が遅れると命に関わる病気です。
特に偽妊娠をしやすい犬では発症リスクが高まるとも言われ、一概には言えませんがシニア期以降にかかりやすくなるため、メスで避妊手術をするのであれば、7歳位からのシニア期に差し掛かるまでには行いたいものです。
また、メスでは発情出血開始から3カ月経ち、性ホルモンの影響がなくなった無発情期が手術をする時期としては望ましいとも言われます。

オスの去勢手術は、病気予防の観点からは早期が理想だということはありません。
老犬になると麻酔リスクが高まるため、遅くとも10歳以前には手術が受けられれば安心ですが、飼育環境やライフスタイルなども考慮のうえ、獣医さんと相談しながら飼い主さんがベストだと思うタイミングを探ってみてください。

犬の去勢・避妊手術のメリットとデメリット

オスの場合

・メリット
精巣腫瘍、前立腺肥大症、肛門周囲腺腫といった病気を予防できるのが最大のメリットです。性ホルモン関連性の皮膚炎の予防も可能です。
性ホルモンの一種であるテストステロンが影響する攻撃性を、去勢することで軽減できると言われます。そのため、攻撃行動を改善するために行動治療の獣医師やドッグトレーナーなどから、去勢をすすめられるケースがあります。
同様に、マーキング癖の解消にも、去勢手術が役立つことが知られています。ただし、攻撃行動やマーキング行動の原因は多様で多角的なアプローチが必要なのと、犬本来の性格によるところも大きいため、去勢だけで性格や行動が変化すると思わないでください。

・デメリット
性ホルモンの分泌の変化によって、太りやすくなるのがデメリットのひとつ。
性ホルモンが減ると、毛づやが悪くなるケースが見られることもあります。

メスの場合

・メリット
子宮蓄膿症、卵巣腫瘍、子宮内膜炎、2歳以前の避妊手術であれば高確率で乳腺腫瘍が予防できます。
精神的なストレスとなる、発情期の性的欲求や、発情期の陰部の腫れによる違和感や、頻尿、出血している陰部を舐めることから解放されるのもメリットと言えるでしょう。

・デメリット
避妊手術をすると太りやすくなります。毛づやが悪くなることがあるとも言われます。
また行動面からは、もともと攻撃性が高めのメスが避妊手術をしたことで女性ホルモンが分泌されなくなると、さらに攻撃性が高まったという報告もあるようです。

犬の去勢・避妊手術後に注意しておくべきこと

退院時には化膿止めの目的で抗生物質が処方されると思うので、自宅で愛犬にきちんと飲ませるようにするのが重要です。

縫ったところを舐めてしまう犬には、エリザベスカラーなどが必要になるかもしれません。晴れた日の散歩は退院翌日からOKと言われるケースが多いかと思いますが、散歩時には縫合部が汚れないように洋服を着せても良いでしょう。
ただし、通気性の悪い洋服では縫合部が蒸れてしまう恐れがあるので、糸に引っかからず通気性の良い、少しゆったりした洋服を着せてください。

シャンプーは、抜糸後から可能です。
万が一、傷口が腫れてきたり出血が見られたりしたら、すぐに動物病院に連絡を。診察を受けて適切な処置を早めにしてもらえば安心です。

去勢や避妊をすると太りやすくなるため、ドッグフードの給与量は未去勢・未避妊の犬よりは減らす必要が生じてくるでしょう。
何%ほど減らすのが適切かは個体差があるので、愛犬の様子を見ながら、獣医さんや犬のプロと相談のうえ、ライフステージごとに給与量を見直しながら愛犬の適量を見つけてあげましょう。

まとめ

去勢・避妊手術にはメリットもあればデメリットもあります。
それらを踏まえたうえで、愛犬に去勢や避妊手術をさせるか否かは、愛犬のライフスタイルなど広い視野で考慮しながら、飼い主さんがよく考えて決めましょう。

執筆者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。
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