犬の留守番は何時間が限界?

食事のタイミングや排泄を考えると、12時間くらいが限界と私は考えます。
しかし、しつけ方を含め、個体差は大きく、1時間の留守番もできない子もいれば、8時間以上の留守番が可能な子もいます。
食事は自動給餌機で管理し、排泄は室内で自由にできるようにして、半日以上犬に留守番をさせるケースを見聞きしたこともあります。
ただし、体調の急変を含め、事故やトラブルがあったとき、自分で対処できない犬を無人の環境に置くのはリスクが高いことを意識する必要があるでしょう。
何かに引っかかって動けなくなってしまったり、空調がうまく作動せず、室温が高くなってしまったりしているかもしれません。

また、体調変化の激しい子犬や老犬は、可能な限り留守番は短時間に済ませるのが理想的です。
好奇心旺盛な子犬は予測不能ないたずらをする可能性があれば、老犬は体調が急変し、倒れる危険性もあります。
特に子犬はしつけを行ううえで大切な時期。いい生活習慣を身につけさせるためにも、目の届かない留守番の時間は極力短くするのが好ましいです。
トイレトレーニングしている時期であれば、失敗をさせないのがトイレのしつけの基本ですから、トイレを我慢できる時間を留守番の限界としてもいいでしょう。

群れの生活を基本とする犬にとって、ひとりで過ごすことはあまり得意ではありません。
成長とともに自然に上手に留守番ができるようになるわけではないので、家族のライフスタイルに合わせた留守番のトレーニングが必要になります。

犬の留守番と分離不安について

家族がいなくなってしまいどうしていいかわからずパニック状態……。
これを「分離不安」と言い、飼い主や家族と離れたことによる不安で引き起こされる症状です。

さまざまな行動が見られますが、よく例として挙げられるのが、吠える、物を噛む、壊す、粗相する、自傷行為などです。
家に帰ってきたら、家具がボロボロ。在宅時はきちんとトイレでできるのに、あちこちに粗相したり、手足、身体を舐めたり、傷になるほど噛んだり、毛をむしったりなどの自傷行為をする子もいます。
在宅時には落ち着いて過ごしているのに、不在にした途端、予想を超える行動を起こす子も少なくありません。
不在時の問題行動のため、対応方法も難しく、飼い主さんからいただくお悩みでも、分離不安だと思われる事例のご相談は非常に多く、深刻な問題になることも多々あります。

分離不安は疾患と捉え、動物行動治療の分野になる場合と、問題行動としてしつけトレーニングで対応する場合とがあります。
動物行動治療は獣医師、問題行動はトレーナーの専門になりますので、分離不安が疑われた場合は多方面に相談することをおすすめしています。

犬の留守番に必要な環境づくり

留守番環境で一番大切なことは安心、安全です。
無人の状態ですので、何が起こるかわかりません。安全に配慮した環境づくりを心がけましょう。

誤飲の可能性のあるものは、届かない場所に置いてください
寂しいだろうからこれで遊んでいてね、と渡したおもちゃを誤飲することがあります。
病院を受診する理由でもっとも多い事故は、誤飲です。
おもちゃに限らず、人のにおいのついたものなど、意外なものまで飲み込む可能性があるので、室内に犬の口に入る大きさの物がある場合は注意が必要です。

誤飲を含めた事故対策には、ハウス内での留守番がおすすめです。
ハウスに入れることに窮屈な印象を持つかもしれませんが、かつて穴蔵生活をしていた犬は比較的狭い場所を好む性質もあるので、もともとの習性に合ったものと言えます。

ハウスはサークル、ケージ、クレートと形がさまざま。どれを選ぶかは室内の状況やライフスタイルにもよりますが、半日トイレを我慢できるのであれば、私はクレートをおすすめしています。
移動用キャリーとしての用途もできるクレートを、安心して寝られる場所と犬に認識させましょう。
クレートトレーニングができていると、安心して家族を待つことができます。

また、十分な量の飲み水を用意してあげてください
ひっくり返すことも考慮し、器の形状に気を使ったり、複数個用意したりするといいでしょう。ボトル式のものとお皿を併用するのもおすすめです。

ちなみに、室温調整は何℃にしたらよい、という明確な基準はありません
家族が在宅のときに、犬にとって心地よい室温設定を把握することが大切。季節によって日の差し方、空気の通り方も違うので、空調を使わない場合は注意が必要です。

室内を自由に動ける状態で留守番させるであれば、犬は自分にとって心地よいところを探して移動できます。
しかし、ハウス内(サークル、クレートなど)での留守番の場合、限られた空間の中から逃げることができないので、さらに気を配る必要があります。
不在時に空調管理がうまくいかず、室温が上がりすぎて熱中症になる子は意外と多いもの。特に真夏、真冬の過酷な季節は、空調でしっかり管理することが望ましいです。

そして、室内にひとりで残される犬の気持ちを想像してみましょう。特にやることもなく、刺激のない時間をひとりで過ごすのはなかなか苦痛ですよね。
家族の在宅時の環境を再現したほうが、犬も精神的に落ち着きます
いつもテレビをつけているお宅であればテレビをつけっぱなしにしたり、夕方からのお出かけであれば電気をつけておいたりすると、分離不安対策にもなりますよ。

犬の留守番に必要なしつけ

まずは留守番自体に慣らしましょう。
留守番ができているかどうかの判断は家庭によって違いますが、帰宅したとき、室内でおとなしく過ごしていれば、留守番ができているという判断でよいかと私は考えています。
ただし、不在時の犬の様子は家族にはわかりません。
室内が荒れていなくても、吠えてしまっていた場合、ご近所に迷惑をかけていることもありますので、ご近所への気遣いは忘れないようにしましょう

最初から問題なく長時間の留守番ができる子もいれば、できない子もいます。留守番がうまくできない子はトレーニングが必要です。
はじめのうちは数分の短時間から成功体験を積ませましょう。
留守番と一言に言っても、ゴミ出し、近所への買い物、出勤、お出かけ……シチュエーションはさまざま。
分離不安などがある犬は、同じ部屋から家族が出ただけで問題行動を起こすこともあります。
家族の外出時間や服装、外出前の行動などにより、犬の様子が異なることもあるので、そのときの状況を注意深く観察してください。
留守番ができたときと、できなかったときの状況の違いを比べ、愛犬が留守番できる条件を見つけましょう

ハウストレーニング

子犬のときはハウスの中で生活していたのに、成長とともにハウスの習慣を辞めてしまうケースが多くありますが、それはとてももったいないことだと感じています。
ハウストレーニングの目的は、ハウスの中でおとなしくさせることではなく、犬にとって安心できる場所を確保してあげることにあります。
ハウスを大好きな場所にするために、ハウスの中で食事、おやつタイムをとってあげたり、クッションや毛布を敷いてあげたり、居心地のよい空間を目指しましょう。
お気に入りのおもちゃの定位置をハウス内にすることもおすすめです。
扉を閉めると大騒ぎしてしまう場合は、扉を取り外す、もしくは開けたままでも問題ありません。
閉じ込められてしまう不安を取り除き、自発的にハウスに出入りできるようになるところから始めましょう。
自分から入らないときは、おもちゃやおやつで誘導する方法が有効です。

まとめ

できれば家族とは離れたくないのが犬の心情。
留守番はできて当たり前でなく、留守番をしてくれる犬たちへの気遣いが必要ということを忘れないでください
ひとりの時間は少なからず、ストレスを与えていることを認識しましょう。
留守にするぶん、前後で散歩や遊びなどのスキンシップをしっかりとり、お互いに気持ちよく、それぞれの時間を作れるようになると理想的です。
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 執筆者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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