犬のくしゃみの原因について

くしゃみはなぜ出るのでしょうか。実は、鼻を刺激物から守るためです。
鼻は、病気の原因となる細菌やウイルス・異物などの刺激物に常に晒されています。この刺激物を排除するため、犬はくしゃみを起こすのです。

くしゃみが出る理由として、一つ目に生理的な反射があります。
例えば、鼻に犬自身の毛が触れたりすると、体の反応としてくしゃみが起こります。冷たい空気を吸って鼻腔内の温度が急激に下がったときや、強い光に急に晒されたときも、神経を刺激されてくしゃみが出ることがあります。
これらのくしゃみは、鼻への刺激を取り除こうとする一時的な反応で、刺激が取り除かれれば体は元の状態に戻ります。

二つ目に、病気の一症状として出るくしゃみがあります。
ウイルスやカビ、細菌の感染で鼻の粘膜が刺激されたとき、小さいおもちゃや草の実などの異物が、鼻の内部を機械的に刺激したとき、アレルギーのある犬が花粉やホコリなどのアレルゲンに晒されたとき、できもの(腫瘍やポリープ)ができたときなど、さまざまな要因でくしゃみが出ます。
これらのくしゃみは、鼻以外に原因がある場合や、鼻に原因があったとしても異物やできものの影響を受けている場合は、くしゃみをしただけでは刺激は取り除かれません。
そのため、それぞれ症状に合った治療や原因を探る検査が必要になります。

また、意外と多い病気の一症状として、歯石の付着があります。
高齢で、特に鼻の長い犬種(ミニチュアダックスなど)は、歯からの二次的感染による膿が鼻の内部にまで達し、くしゃみを引き起こすこともあります。
ちなみに、犬のくしゃみの原因で最も多いのは、異物によるものです。
犬はお散歩に行くため、いろいろな物が落ちている屋外に出る機会が多く、また、においから周囲の情報を集めようとするので、異物を鼻に吸い込む機会が多いのでしょう。
これは本能的なものなので、やめさせることはできません。愛犬のくしゃみが心配なときは、早めに動物病院を受診してください。

くしゃみと逆くしゃみの違いについて

犬特有のくしゃみで、「逆くしゃみ(逆流性くしゃみ)」というものがあります。
通常のくしゃみが、鼻から空気を出す動作なのに対し、逆くしゃみは発作のような息を吸う動作です。
鼻から喉にかけた部分でなんらかの刺激があったときに始まります。息を吸う際に、「がはっ、がはっ」という、鼻を鳴らすような大きく苦しげな音が出るため、心配される飼い主さんも多くいらっしゃいます。
逆くしゃみが出る犬の多くは、小型犬です。症状は、興奮したときや水を飲んだ直後に出やすくなります。
たいていは一過性で、がはがは音は数秒で終わります。呼吸が苦しくなることもほとんどありません。
逆くしゃみは、生理的な反射に近いため、ほとんどの犬に治療の必要はありません。逆にいうと、治ることもなく、ずっと症状が出ることが多いです。
一方で、まれに症状が進行することがあります。鼻水を伴ったり、呼吸が苦しくなったりする場合は、治療とともにほか病気が隠れていないかの検査が必要になることもあります。

犬のくしゃみから考えられる病気

上記でも触れましたが、犬のくしゃみの原因で最も多いのは異物です。そのほかにウイルスや細菌感染・歯根膿瘍・腫瘍・アレルギー・カビなどが考えられます。

ウイルス感染

犬ジステンパーウイルスに感染すると、初期はくしゃみや鼻水・咳といった呼吸器症状から下痢・嘔吐などの消化器症状を示します。
さらに1週間ほどで急激に症状が進み、神経症状から死に至ります。6カ月齢未満の子犬での感染が多いです。
重要なのは、このウイルスは、混合ワクチンの接種で症状を軽減することができるということです。新しく子犬を迎え入れたら、必ず混合ワクチンの接種をしましょう。
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歯からの二次的感染

愛犬のお口の中はきれいですか? 口の中のケアがうまくできていないと、歯石が多量についてしまうことがあります。
歯石は細菌の温床です。歯と歯茎の隙間に細菌が入り込み、根元が化膿すると、歯根膿瘍となります。
このときの膿が、鼻まで達して、鼻水やくしゃみを引き起こすことがあります。鼻の長い犬種(ミニチュアダックスなど)は、口と鼻腔(鼻の内部)が接している部分が多いため、特に歯が原因でくしゃみを引き起こしやすいです。
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腫瘍

くしゃみや鼻血・鼻水が止まらない中高齢の犬は、鼻の中に腫瘍ができている可能性があります。特に血混じりの鼻水が出る場合は、腫瘍の可能性が高いと言われています。
初期に前述の症状が出て、進行すると顔面の変形や神経症状を伴います。残念ながら、鼻の中の腫瘍は96%が悪性であり、最先端の治療をしても根治は望めません。
しかし、治療をすることで快適な生活を送れる犬も多くいます。腫瘍と診断が下っても、諦めずに上手に付き合っていける方法を探してください。

生理的なくしゃみと病的なくしゃみの見分け方

一過性の生理的なくしゃみと、病気の一症状としてのくしゃみとでは、なにが違うのでしょうか。
まず、くしゃみが出る期間に注目してください。生理的な反応のくしゃみは、単発です。一方で、病気が原因のくしゃみは、長い期間繰り返し出ていることが多いです。
次に、くしゃみ以外の症状の有無を見てください。鼻水や涙・眼脂を伴う場合は病的なくしゃみと思われます。
このほか、異物が疑われる場合は、急にくしゃみを連発して止まらなくなったり、顔をしきりにこすったりする仕草が認められやすいです。異物が原因の場合は、くしゃみとともに膿混じりの鼻水が出ることも多いです。鼻ののどに近い奥の方まで異物が入った場合は、吐き気が引き起こされることもあります。

高齢の犬で、くしゃみとともに血混じりの鼻水が出る場合は、鼻の中に腫瘍ができている可能性があります。ただし、鼻の長い犬種では、歯根膿瘍が原因であることも。
歯根膿瘍は自宅でのオーラルケアによって、かかる可能性を下げることができます。
理想は歯ブラシによる歯磨きですが、難しければ、ガーゼなど遊び糸が出にくい布で歯を拭くことから始めたり、紐状のおもちゃで引っ張りっこして遊んだりしてください。

また、アレルギー性鼻炎を患っている場合、アレルゲンが季節特有の草花であることが多く、一年の決まった季節にくしゃみが出ることが多いです。
このほかにも、衣替えや、今まで使っていた敷物や香水・洗剤を新調するタイミングでも、これらが刺激(アレルゲン)となってくしゃみが頻発することがあります。
アトピー性皮膚炎など、皮膚にアレルギー症状が認められる犬では、同じアレルゲンが原因でくしゃみが出ることもあります。

まとめ

くしゃみと一口に言っても、逆くしゃみのように治療を必要としなかったり、歯からの刺激のように自宅でのケアで軽減できたりするものもあります。
犬のくしゃみは異物によるものが一番心配ですので、愛犬の周囲の環境に気を配ってあげてください。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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