犬の涙やけとは?

涙やけという単語は、医学的専門用語ではなく俗語です。
涙やけの定義というものは存在しませんが、日本語の国語的な語義でいうと「やけ」は物質が焼けたあとに起きる変性を叙情的に表現する言葉です。
夕やけ、日やけした本、など一般的には物質が赤く変色することを指すもので、涙やけもそこから派生した造語だと考えられます。

どの程度からが涙やけと言われるのか、定義のようなものは存在しませんが、薄い毛色の犬種で赤く目立つ部分を特に涙やけと表現されることが多いです。
国語的な意味のやけの意味とは異なり、犬の涙やけの場合はどちらかというと、毛色が変色した状態を指し、ネガティブな意味で使われる用語です。

ちなみに目のまわりが赤茶~黒色に変色した場合でも、地毛の関係で変色が目立たない場合は、通常、涙やけしているとは言われません。

犬の涙やけの原因について

涙液の98%は無色の水分で構成されています。
涙液は角膜を保護する役割を持ち、通常であれば、目頭に涙点という穴から入って鼻涙管という管を通り、喉から吸収されます。
本来は外側に溢れるほどは産生されませんが、涙やけは、なんらかの理由で眼球から涙が溢れ出し、涙の成分が赤茶色く変化することによって起きるのです。
涙が眼から溢れてしまう原因はいくつかあります。主な原因は以下に分けられます。

1.まだ涙点や鼻涙管が発達しておらず、生産量が排泄量を上回ってしまう場合
この場合の涙やけは、成長とともに治ります。ただし、あまりに多くの涙が溢れ、感染を起こしやすいようなケースは、点眼や鼻涙管洗浄などの処置が必要なこともあります。

2.老廃物で鼻涙管が詰まり、生産量が排泄量を上回ってしまう場合
鼻涙管が細くて詰まりやすい、食べ物の成分によって詰まりやすい、体質的に涙の粘り気が強いなど、いずれかまたは複数の要因が重なって鼻涙管を塞いでしまうケースです。病院で眼の傷を調べる検査薬を使用し、鼻涙管の詰まり具合をチェックすることができます。
この場合は、外側からのマッサージが有効な場合もありますが、鼻涙管洗浄という処置を行わないと詰まりが取れないこともあります。

3.涙点の場所が浅く、排泄しにくい構造をしている場合
解剖学的に涙の排泄が苦手な犬種もいます。構造上の問題なので、老廃物がたまりにくくするだけではケアとしては不十分で、定期的な鼻涙管洗浄が必要になります。

4.炎症を起こしている場合
異物(まつげやゴミなど)の刺激や、アレルギー反応などによって角膜に細かい傷がついた場合、角膜が炎症を起こしていることがあります。

5.眼輪筋が未発達な場合
目の周りの筋肉が未発達だと、涙点や鼻涙管の状態に関わらず十分な涙液の排泄が行われないことがあります。

涙やけを起こしやすい犬種について

次に涙やけを起こしやすい犬種と、それぞれの理由を整理していきます。
解剖学的に、涙点の位置によって、鼻涙管に涙が流れにくい構造をしている犬種がいます。特にトイプードルが代表的ですが、ほかにはマルチーズなども挙げられます。
先天的に涙点の位置が涙液を排泄しにくい場所にあるだけでなく、鼻涙管も細く老廃物がたまりやすいため、ほかの犬種より眼から涙液が溢れやすく、涙やけを起こしやすいのです。

また、パピヨン日本スピッツなどの犬種も、目頭の毛が目にあたりやすい犬種も、刺激で涙液が溢れやすく、涙やけを起こしやすいです。
眼球が突出しているチワワシーズーブルドッグフレンチブルドッグペキニーズパグなども異物や目元の毛などの影響を受けやすく、涙やけしやすい犬種です。

種別ではなく個体差でも、老廃物により涙が粘りやすくなる子がいるという説もあります。ただし、現在のところ涙やけと涙の成分の相関関係の調査は存在していないので、これはあくまでも仮説です。

犬の涙やけ対策・予防法について

ここまで説明してきた通り、犬の涙やけは、眼から溢れ出た涙や付着する老廃物、それに繁殖する細菌などが関連しています。
犬の涙やけの予防や対処法としては、溢れ出る涙を抑えること、溢れ出てしまった涙への感染を防ぐことが大きな柱となります。

着色した赤茶色の涙やけをきれいに落とすためには、変色した毛を切り落とすのが確実です。
ただし、根本的な原因を取り除かない限り、また涙液が溢れ出て毛を染めてしまいます。
涙やけを化学的に目立たなくする液体などは市販品でもいくつかありますが、すんなりときれいに着色前の状態に戻るものはありません。
逆に強い漂白剤を慢性的に使い続けることは、皮膚や眼球への影響を与えてしまいます。

涙やけの原因が細菌感染によるものは、抗生物質などの点眼薬が有効的です。
しかし、やはりこれも長期間使い続けることは、耐性菌の観点からもあまりいいことではありません。

なお、一説には、フードに含まれる添加物や色素などの代謝産物が、詰まりやすく、変色しやすい涙を作るとも言われています。
なるべく添加物の少ない原料のクオリティの高いフードに変えることで、劇的に涙やけが改善することもあるようです。
手作り食に変えたら涙やけが減ったという声もあるのは、添加物の摂取が減ったことも大きいでしょう。
ただし、どの子の涙やけも確実になくすという魔法のフードはありません。涙やけ改善によさそうなものを試しに与えてみて、体質に合うフードを探していくことが大事です。
サプリメントが効くケースもあるので、気になる方はかかりつけの先生に相談してみるといいでしょう。

また、涙の産生量を減らすために、刺激となる目元の毛はこまめにカットしてください。
少しでも涙の量が多いと思ったら、かかりつけの動物病院で角膜炎や鼻涙管の詰まりなどはないかをチェックし、必要に応じて処置を行うことが重要です。
近年では定期的に鼻涙管洗浄を行う飼い主さんもいらっしゃいますよ。
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まとめ

涙やけそのものは毛の変色であり、必ずしも病気のサインであるとは限りません。しかし、限度を超えて臭いが強い場合は、眼に何らかのトラブルを抱えている可能性もあります。
愛犬が涙やけを起こしやすいときは、ワクチン接種などのタイミングでかかりつけの先生に相談してみるといいでしょう。
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 執筆者プロフィール
東京医科歯科大学医学部保健衛生学科中退後、麻布大学獣医学科獣医学部卒業。
都内動物病院勤務医を経て、2007年渋谷区にどうぶつ病院ルルを開業、10年間院長として小動物臨床に携わった。
教科書どおりではなく、病気を構成するあらゆる要因を考慮し、東洋医学などの選択肢も取り入れ、治癒力を高める医療技術は根強いファンが多かった。
民法ニュース出演や、BS番組出演、監修した書籍はアジア6カ国で翻訳されるなどの実績を持つ。
院長退任後は国外資格に挑戦予定。

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