猫の発情期ってなに?いつから始まる?

発情期とは、性的に成熟した動物が繁殖のために交尾を行う時期のことです。
猫は季節繁殖動物に分けられ、交尾によって排卵が起きるため、人間のような生理出血はありません。ですので、雌猫の性器から出血が見られた場合、それは生理ではなく病気の可能性があるので注意してください。
猫の繁殖期は1~8月頃で、この期間中に発情を繰り返します。

猫の発情は日照時間が関係していると言われています。猫の妊娠期間は約2カ月で、日が長く暖かい時期に妊娠・出産・子育てができるようになっているのです。季節繁殖動物のなかでも、このような動物のことを「長日繁殖動物」と呼びます。
一方で、日照時間は人工的な照明も影響するらしく、室内飼いの猫や街灯などで明るい場所に住む野良猫では、本来日照時間の短い冬にも発情が起きることがあるようです。

雌猫の場合

猫の発情期は個体差があるものの、一般的に生後約6~12カ月頃から見られます。
例外的に長毛種は短毛種に比べて初回の発情が遅く、ペルシャ猫にいたっては1歳~1歳半くらいになることもあります。また、大型の猫種も比較的初回の発情が遅いようです。
雌猫の発情期は発情のサインを見せる「発情前期」、雄を受け入れる「発情期」、そして発情期中に交尾を行うことで排卵し、3~4日後には「発情休止期」に入ります。交尾を行わなかったり、排卵が起こらなかったりした場合でも、7日前後で発情休止期を迎えます。
ここまでを発情期の1つのサイクルとして、年に3~4回ほど繰り返します。

雄猫の場合

雄猫の場合、雌よりも性成熟は遅く、生後7~9カ月頃に精巣内に精子が作られるようになります。
ただし、早くて3カ月頃になると、マウンティングという他の猫に覆いかぶさる行為や腰を振る行為は見られます。
雄は単体では発情せず、雌猫の声や匂いに影響されて繁殖行動が誘発されます。

雌猫の出産に適した年齢は7~8歳頃までですが、発情は10歳以上の高齢猫でも起きるようです。また、雄猫は生涯繁殖欲を失わないとも言われています。

発情期になると猫はどうなるの?

雌猫の場合

雌猫の場合、発情前期にはいつもより活発になったり、飼い主にいつも以上にすりすりと甘えたり、おしっこの回数が増えたり、トイレ以外で粗相したりする猫もいます。
また、食欲が落ちることもあります。期間としては1~数日と短い発情前期で、この時期はまだ雄猫を受け入れません。
発情期になると落ち着きがなくなり、特徴的な大きな鳴き声を上げるようになります。
この時期になると雄猫を受け入れるために、上半身を低くしてお尻を突き出し、後ろ足をふみふみする「ロードシス」と呼ばれる行動をとります。
これは背中や腰を触ることで誘発されます。他にも転がりながら床に背中を何度も擦りつけたり、雄猫のように尿スプレーしたりする猫もいます。

雄猫の場合

前述のとおり、雄猫に発情期というものはありませんが、雌の発情期の鳴き声や雌の出すフェロモンに反応して、繁殖期特有の行動が見られるようになります。
よく見られる行動としては、雌猫の鳴き声に反応して大きな声で鳴く、尿スプレーをするなどです。
尿スプレーはトイレの失敗などとは違い、柱や壁などの高い位置に尿を吹きかけるマーキング行為です。猫の鼻くらいの位置に吹きかけるので、通常のおしっことは区別できるかと思います。
また、この時期は雌猫を求めて外へ出たがったり、他の雄猫と雌猫を取り合うために気が立って攻撃的になったりします。

猫の発情期の対処法や注意点

猫の発情期の行動は、猫の本能からくる行動なので、叱っても止まるものではないと思ってください。しかし、それでも飼い主が事前に対処できることもあります。

猫の発情行動で一番相談を受けるのは、やはり鳴き声です。
犬と違い、普段あまり鳴き声が気にならない猫ですが、発情期の鳴き声は雄猫を引き寄せるための声なので、ボリュームが大きく響きやすいです。
特に集合住宅では騒音トラブルになりかねません。隣近所の方に発情期の猫の鳴き声についてあらかじめ話しておけば、多少は心象が変わるかと思います。

尿スプレーやトイレ以外での粗相は柱や壁に防水シートを貼ったり、ペットシーツを敷いたりなどの対処法があります。
また、異性の猫との接触が刺激となって発情が起きるため、なるべく他の猫との接触を避けるようにするのも効果的です。

しかしながら、繁殖期に外から雌猫の鳴き声が聞こえれば、室内飼いの雄猫もソワソワしだします。この時期は異性を求めて外に出ようとするので、脱走にはくれぐれも気を付けてください。

発情期の猫を落ち着かせる方法は?

猫にとって交尾相手のいない発情はストレスであり、身体的な負担にもなります。
落ち着かせることが目的だとしても、飼い主に叱られたり水をかけられたりすれば、さらに猫にストレスをかけることになるので避けたほうがいいでしょう。

またたびを与えてストレスを軽減させる方法もありますが、またたびの効果には個体差があり、まったく変化が見られない子もいれば興奮しすぎて攻撃的になる子もいます。その場合は、ただでさえ発情で気が立っている猫には逆効果です。
また、またたびのあげすぎは呼吸困難を引き起こす危険性があったり、稀にまたたびにアレルギーを持つ猫もいたりするので、使用する際は注意が必要です。

猫のストレス発散や夜鳴きの対策として、昼間に遊んであげるなどして運動させてあげるのもいいでしょう。

なお、湿らせた綿棒を膣に挿入して排卵を誘発させという方法がインターネット上で紹介されていますが、上手く排卵を誘発させられるとは限りませんし、膣粘膜を傷つける危険性のほうが高いので止めておきましょう。

避妊・去勢手術を検討しましょう

猫の発情を根本的に防ぐ方法は、避妊・去勢手術となります。雌であれば、全身麻酔をかけて卵巣と子宮を摘出します。雄は精巣の摘出を行います。
健康なのに手術なんて……と思う方も多いかもしれませんが、繁殖を考えていないのであれば望まない妊娠を防ぎ、性に関する病気の防止(雌であれば子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、雄であれば精巣に関する病気)、発情によるストレスや問題行動の防止(尿スプレー、オス同士の喧嘩や脱走など)など、メリットのほうが多いのです。

手術が可能な年齢としては、雌は初めての発情が起きる前、生後6~8カ月齢が目安となります。雄は精巣が降りてくる、6~10カ月齢が目安です。
手術費用は医療機関によって異なりますが、雌で2~3万円、雄では1~2万円くらいかと思います。雄と雌で費用が異なるのは、雌はおなかを開く必要があるためです。
麻酔をかけても問題ないかどうか、手術の前に血液検査を行う場合は、5千~1万円。中年以上の猫であれば、心肺機能の検査も受けたほうがいいので、その場合はさらに1万円ほどの検査費用がかかります。
初めての発情を迎えて、実際に鳴き声や発情期のさまざまな問題行動に直面して、やむなく手術を決める方も多いです。
発情期中の手術は不可能ではありませんが、普段より出血が多くリスクが高くなります。猫の安全のためにも、発情期中の手術は避けたほうがいいでしょう。

ただ、稀に雌猫で手術後に発情が起きるケースがあります。
手術の際に卵巣の細胞が腹腔内に落ちて再生する場合や、一度発情を経験したことで卵巣や子宮が無くても発情が残ってしまう場合などが考えられます。その場合はホルモン検査や卵巣の再生の有無を調べる試験開腹が必要になります。
雄の場合も尿スプレーを経験したあとでの手術では、術後も変わらず尿スプレーをする癖が残ってしまうこともあります。
本来、尿スプレーは自分のテリトリーを主張するマーキングの一種なので、縄張り意識の強い猫や同居の猫が増えたタイミングで始まることもあるのです。

まとめ

「猫の恋の季節」と言いますが、実際に家の中であの独特な鳴き声をされるとかなりうるさいですよね。ただ、猫にとってそれは本能のなせるものであり、思いを遂げられないのもまたストレスだという事実。
飼い主さんが猫の発情期の行動を把握することで、お互いストレスにならないようこの時期を乗り越えていきたいですね。
また、繁殖を望まないのであれば、猫の健康のためにも避妊・去勢手術は考えておきましょう。
 執筆者プロフィール
獣医師 / ペットサロンBEANS
酪農学園大学獣医学科卒業、後に日本獣医中医学院にて中医学を学び獣医中医師の資格を取得。

ペットスペース&アニマルクリックまりも様にて臨床経験を積ませていただきながら経営のノウハウを学ばせていただき、2017年2月、調布市にペットサロンBEANSを開業。

ペットホテルとペットの鍼灸治療を行っています。また、週に2日はまりも様にて代診を行っております。
鍼灸という身体に負担の少ない治療法でペットや飼い主さんの手助けができればと思っています。

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