猫の血尿は病気のサイン?

猫ちゃんのおしっこは、正常であれば黄色です。
猫の祖先はもともと乾燥した地域に生息していたため、少ない水でも生きていけるよう、尿を濃縮し、体内で余った水分を再利用し、少ない水で生きる術を身につけました。そのようなことから、人間より濃い色の尿が出ることも正常です。
しかし、そのことが逆に腎臓や膀胱に負担をかけ、泌尿器系の病気にかかりやすい体になってしまったのです。

「赤い尿」というのは、尿に血液が混ざっていることを示します。これが出た場合は明らかに異常であり、何らかの病気が隠れているサイン。
稀に摂取した薬物や色素によって赤い尿が出る「偽血尿」もあります。見た目での判断は難しく、病院で尿検査を受けなければ上記のどれであるか見極めることは困難です。

泌尿器系のトラブルを持つ猫ちゃんはとても多いです。
これらの病気は一度かかると長引いたり、繰り返したりすることが多いため、予防や早期発見・治療がとても大切になります。
日頃からしっかり猫ちゃんの尿の状態を観察して、血尿が見られた場合はもちろん、排尿時にいつもと様子が違うところがある場合はすぐに動物病院を受診してください。

また、メス猫の場合、人間の「生理」、犬でいう「発情出血」と思うオーナーさんもいるようですが、猫には発情出血はありません!
ですので、少しでも尿に血液が混ざっている場合は、できるだけ早く病院を受診しましょう。

猫の血尿の原因は?

赤い尿には、大まかに分けて、尿中に赤血球が含まれる「血尿」と、血液成分のみが含まれる「血色素尿」があります。

今回は前者「血尿」をメインに説明します。
血尿は赤~ピンク色のことが多いです。排尿時のどのタイミングに血液が見られるかも診断のヒントになります。

外傷

事故などで膀胱や腎臓を強く打ってしまった場合にも、血尿が出ます。この場合は他にも全身症状があるので、判断しやすいかと思います。
また、尿道や生殖器に外傷があっても、鮮血(真っ赤な血液)が見られます。排尿のはじめに出血が見られることが多いですが、排尿と無関係に出血だけが見られることもあります。
他にも、陰部、陰茎からも出血することがあります。出血の原因は外傷、感染、炎症、腫瘍などです。同時に、生殖器を舐めるなどの症状が見られます。
出血が外傷によるものであれば、それが治れば出血も治まります。
しかし、出血の原因が腫瘍であれば、その根本を治療しなければなりません。感染による出血であれば抗生物質を投与し、1~2週間で治癒します。

尿路結石

猫ちゃんにとても多くみられる疾患です。下部尿路疾患ともいいます。
猫ちゃんは尿を濃縮しているため、水分と一緒に排泄すべきミネラルなどの物質が体内にたまりやすいです。その物質が結晶化すると砂や石のような状態になり、尿の通り道を傷つけることで起こります。
この尿石症は2~6歳のオス猫や肥満猫に罹患しやすいといわれています。水分摂取量の減る秋~冬にかけて発生が多くなります。

血尿以外には、頻尿、排尿痛、排尿中に鳴く、生殖器を舐める、不適切な場所での排泄などの症状が見られます。
結晶のせいで尿をうまく出せないと毒素が体内にたまり、急性腎不全、尿毒症を引き起こします。嘔吐、元気消失、食欲低下、脱水などが見られます。
最悪の場合、結晶が完全に尿道をふさいでしまい、尿をまったく出せない状態になることも。これは非常に危なく、緊急を要する状態です。すぐに動物病院を受診してください。

尿路結石の治療は、結晶を溶かすことを目標とします。
猫ちゃんの場合、結晶はストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と呼ばれるものがほとんどです。点滴で尿量を増やし、ストラバイト結晶をできるだけ外に排泄するのと同時に、感染を抑えるために抗生物質を投与します。
この病気はなかなかすぐに治りません。見た目で血尿が止まったと思っても、まだ顕微鏡下では赤血球が認められます。
自己判断で投薬をやめずに、しばらく内服薬を続けてください。平均して治癒まで1~2カ月はかかります。

そして残念ながら、一度発症してしまった猫ちゃんは、繰り返しやすいです。ですので、治癒後もマグネシウムなどミネラルを制限したフードに切り替え、維持することが多いです。
なかには、体によさそう、とミネラルウォーターを与えている方もいますが、もちろんそれにはミネラルが多く含まれてるので、尿石症が起こりやすくなります。猫ちゃんには普通のお水を与えてください。

膀胱炎

膀胱炎も非常によくみられる病気で、排尿時や排尿の最後に赤い血尿が見られることが多いです。
トイレの環境が不衛生だったりすると、そこから細菌感染を招き、出血が起こります。
尿検査では細菌と、それと戦う白血球が見られます。治療は抗生物質の投与になります。こちらもなかなかすっきり治る病気ではなく長期的な検査と治療が要されます。
さて、なかには膀胱内に細菌がいないのに、出血だけが見られる膀胱炎があります。いわゆる「原因不明」の膀胱炎で、「突発性膀胱炎」と呼びます。
ストレスなどにより起こると言われますが、原因不明ですので治療は難しいです。こまめに検査をしながら、投薬を続けます。
人間では「膀胱炎は風邪のようなもの」と言われることもあり、軽度であれば自然治癒するケースもあるでしょう。
しかし、猫ちゃんの場合はどうしても悪化しやすいので、血尿が見られた時点で受診することをお勧めします。

腎炎

腎臓が炎症を起こし、出血を起こすこともあります。この場合は、尿に混ざって固まった血液が出ることもあります。点滴で水分を補給しながら、炎症を取り除く投薬治療を行います。

腫瘍

腎臓、尿管、膀胱、尿道、生殖器のいずれかに腫瘍がある場合も、血尿は見られます。画像検査で簡単に見つかることもありますし、そうでない場合もあります。腫瘍の種類により治療経過はさまざまです。

血色素尿

「血色素尿」についても少し説明します。
こちらは血尿に比べると少しオレンジ、茶色~黒っぽい色の尿です。血色素尿は泌尿器とは無関係に、体内で赤血球が破壊されることにより起こります。
原因としては血液を壊す感染症、貧血、また身近なものとしてタマネギ中毒、熱射病などもあります。
いずれにしても、緊急を要する状態ですので、このような色の尿が見られた場合はすぐに病院を受診しましょう。

猫の血尿のチェックポイント

日ごろから愛猫の尿をしっかり観察することを心がけてください。チェックポイントとしては、下記のようなものがあげられます。

・尿の色、形状:血尿ではないか、キラキラした砂のようなものが混ざっていないか
・尿の回数、量:いつもより尿の回数が増えていないか、1回あたりの量が減っていないか
・排尿の様子:排尿場所を間違えたり、排尿時に痛がったりする様子はないか、ペニスや陰部を舐めたりしていないか

これらの項目をチェックしたあとは、トイレを清潔に保ちましょう。
また、上記のチェックポイントで気になることがあれば、猫ちゃんの状態(元気、食欲、嘔吐の有無)もしっかり観察してください。

猫の血尿の採尿方法

愛猫の血尿で受診すると、動物病院ではまず尿検査を実施します。
この際、自宅から尿を持っていくと診断の助けになりますし、検査にもスムーズに入れます。ただし、この「採尿」、オーナーさんにとっては少し難しいようです。

尿検査に適している尿は、余計なものが混ざっていない尿です。
一番の理想としては猫ちゃんが排尿しているときに尿を受け皿や採尿スティック(動物病院で入手可)などで受け取る方法です。ただし、排尿の最中にこの方法で簡単に採尿をさせてくれる猫ちゃんはあまりいません。
この場合は、いつものトイレで、砂やペットシーツをはずして排尿させてください。トイレにたまった尿をスポイト、シリンジなどで採取します。
また、現在はインターネットで検尿用採尿シートというものを購入できます。少し雑菌は混ざりますが、検査は可能です。
検査に必要な尿量は最低でも2ml程度。多ければ多いほど助かります。

神経質な猫ちゃんのなかには、トイレの様子がいつもと違うことで排尿を我慢してしまう子もいると思います。
血尿、膀胱炎がある場合、排尿を我慢させてはいけないので、その場合は無理に採尿しようとせず、動物病院に相談してください。病院によっては初めから、超音波下で、直接おなかから膀胱に針を刺し、採尿する手法をとっているところもあります。
猫ちゃんにストレスはかかりますが、もっとも無菌状態で採尿でき、正確な診断ができます。

まとめ

早期治療が大切な「血尿」「膀胱炎」。常に愛猫の様子を観察し、気になることがあれば、どんな些細なことでも動物病院に相談してください。
 執筆者プロフィール
獣医師免許取得後、3人の出産・育児をはさみながら、8年間都内の動物病院で勤務。家族の転勤に伴い、各地を転々としています。
現在はアメリカ在住。動物保護シェルターのサージェリー部門にて勉強中です。ママ獣医・転勤族獣医としての在り方を模索中です。
小さいころからウサギが好きで、獣医師になることを決めました。
ペットとの笑顔あふれる生活のために、少しでもオーナーさんの不安が少なくなるよう、病気のとき以外にも何でも相談できる身近な獣医師を目指しています。

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